19/07/2026
台湾旅行③ 牛肉麺だけで台湾を語るのは、まだ早い。
台湾に帰って三日目。
前日は、台湾の夏らしい甘味、芋頭、芋圓、愛玉、仙草、
そして旬の果物にすっかり心を奪われました。
では、二日目は何をしたのか。
答えは、台北の街を歩くこと。
しかも、ただの街歩きではありません。
今回は、台北駅から少し南へ歩いたところにある、「博愛特区」を歩いてきました。
観光で台湾を訪れる方の多くは、夜市、牛肉麺、小籠包、九份、故宮博物院へ向かわれると思います。
もちろん、それも台湾の大きな魅力です。
でも、台湾を何度も訪れている方にこそ、ぜひ歩いてほしい場所があります。
それが、台北の中心部に残る近代建築のエリアです。
博愛特区を歩くと、不思議な感覚になります。
周囲には現代的なビルが立ち並んでいるのに、少し角を曲がるだけで、
突然、時間が100年前に戻ったような空気が流れ始めます。
重厚な石造りの建物。
高く伸びる列柱。
細かな装飾が残る外壁。
南国の強い日差し。
そして、その建築のまわりに茂るヤシの木や濃い緑。
この組み合わせが、実に台湾らしいのです。
ヨーロッパ風の建築なのに、空はどこまでも青く、植物は力強く、湿度のある風が吹いている。
日本でもなく、ヨーロッパでもない。
ここにしかない、台湾の近代建築の風景です。
国立台湾博物館──南国に建つギリシャ神殿
写真にもあるように、国立台湾博物館の正面に立つと、まず目に入るのは大きな列柱です。
青空に向かってまっすぐ立ち上がる白い柱。
正面の階段。
堂々とした三角形の破風。
まるでギリシャ神殿のような姿ですが、その背景には台湾の青い空と南国の緑があります。
この違和感こそが、実は台北の面白さです。
台湾の街には、さまざまな時代の記憶が重なっています。
清代の街並み、日本統治時代の近代建築、戦後の行政建築、そして現代の高層ビル。
一つの街の中に、いくつもの時間が折り重なっているのです。
お茶も同じです。
一杯の台湾茶にも、品種、産地、製法、焙煎、保存、飲み手の記憶が重なります。
街を歩きながら、私はいつも思います。
台湾を知ることは、時間の層を味わうことなのだと。
博愛特区を歩いていると、金融機関の古い建物にも出会います。
台湾銀行や土地銀行の建物は、ただ古いだけではありません。
そこには、当時の社会が建築に込めた「信用」「権威」「公共性」が表れています。
石の壁。
太い柱。
左右対称の構図。
銀行という場所に求められた重厚感が、建築そのものから伝わってきます。
そして中山堂。
こちらは、古典的な装飾の多い建物とは少し違い、
より直線的でモダンな雰囲気を持っています。
昭和初期のモダン建築の空気が残り、どこか映画のワンシーンのようです。
台湾の面白さは、こうした建築が「博物館の中」だけに閉じ込められていないことです。
今も街の中にあり、人が通り、風が抜け、日常の一部として残っています。
今回、私が特に心を惹かれたのは、建物の外観だけではありません。
足元です。
廊下の床には、円形や植物文様の美しい装飾が残っていました。
一見すると何気ない床ですが、よく見ると非常に丁寧な仕事がされています。
こうした床や壁の質感には、台湾の職人たちが受け継いできた左官、石材、タイル、洗い出しの技術が感じられます。
華泰茶荘の空間にも、私は同じようなものを感じます。
豪華な宮殿のような建築ではありません。
けれど、壁や床の質感、光の入り方、古い建物に残る空気には、
時間が育てた味わいがあります。
良いお茶も同じです。
派手な香りだけではなく、時間と手間をかけたものには、奥行きが生まれます。
建築もお茶も、急いで作ったものは、どこか悪くなります。
長く残るものには、やはり理由があります。
炎天下の台北を歩くと、身体はかなり疲れます。
でも、古い建物の陰に入ると、石のひんやりした空気に救われます。
そして一日の終わりには、やはり一杯の台湾茶が欲しくなります。
街歩きで見た建築の記憶。
石の柱。
古い床。
南国の植物。
青い空。
それらを思い出しながら、茶杯を手に取る。
この時間が、私にとっての台湾旅行の楽しみです。
台湾は、食べるだけでも楽しい場所です。
でも、少し歩いて、少し立ち止まって、建物を見上げてみると、
台湾はもっと深く、もっと面白くなります。
次に台北へ来られる方は、ぜひ「博愛特区」を歩いてみてください。
そしてその後は、台湾茶でゆっくり喉を潤してください。
台湾の旅は、歩いて、見て、食べて、最後にお茶を飲むことで、
ようやく一日が完成するのです。
(華泰茶荘・林華泰茶行 五代目店主 林 聖泰 より)
💡店主からのひとこと
台湾リピーターの方にこそ、次は「建築さんぽ」をおすすめします。
台北駅から歩ける距離に、100年前の台湾の記憶が今も残っています。
「博愛特区」とは、総統府を中心に政治・行政・金融の歴史的建築が集まる、
台北の中でも特別なエリアです。
華泰茶荘本店は、『博愛路69号』
この歴史ある街並みの中で、皆さまを一杯の台湾茶とともにお待ちしています。
建築散歩の余韻を、ぜひ台湾茶の香りでゆっくり締めくくってください。